ストローをくわえた状態のまま声を出す練習です。声帯への負担が少ない声の出し方として、ボイストレーニングで広く使われています。

この練習のねらい

声帯に強い負担をかけずに声を出すことが、ストロー発声のねらいです。リップロールと同じく、声の通り道を部分的にふさぐ練習のひとつです。負担をかけずに声を出している感覚を、練習後の普段の声にも持ち越すことが目標だと説明されています(Cielo ほか, 2013)。

声の通り道の出口が細くなると、のどから口までの空間の圧が上がり、その圧が声帯にもかかります。この圧は声帯を左右に離す方向にはたらくため、声帯どうしがぶつかる勢いがやわらぐ、という考え方です(Cielo ほか, 2013)。もっとも、声帯にそうした変化が実際に起きているかどうかは、声帯を直接見なければ分からず、練習しているその場で確かめることはできません。くちびるでふさぐリップロールとの違いは、ふさぐものが細い管であることと、くちびるの震えのような手がかりが無いことです。

この練習をしている最中と後の体を撮影した研究もあります(Guzman ほか, 2013)。撮影したのは、練習の前に楽な高さで「あー」と声を出したとき、管やストローに向けて声を出している最中、そのあとにもう一度「あー」と声を出したときの3つです。管やストローに向けて声を出しているときと、そのあとに声を出したときの両方で、喉頭(のどぼとけの中にある、声帯が収まっている器官)の位置が下がり、のどの奥が広がったのが見られました。この研究は、練習の後に声の高い方の成分の山(周りより音が強く出ている部分)が強まったことも報告しています。

ただしこれは、男性のクラシック声楽家1名をCTで撮影した結果です。同じことが誰にでも起きるかどうかは、この研究からは分かりません。

練習の前後で普段の声がどう変わるかは、「効果を測って確かめる」の手順で、抜け(SPR)芯(PEAK)の推移として確認してください。

やり方

ストローをくわえたまま、楽な高さで声を出します。息が続く範囲で伸ばしてください。

使うストローによって、のどから口までの空間にかかる圧の高さが変わります。

  • 太さを選ぶ:長さの効果は二次的で、いちばん効くのは太さだと説明されています(Titze, 2018)。細いほど息の流れの抵抗が大きくなり、圧が高くなるためです。太さの目安は、13種類のふさぎ方で口の中の圧を測った研究から分かります(Maxfield ほか, 2015)。内径3.5mmの細いストローで、参加者どうしのばらつきがいちばん小さくなりました。内径6mmの飲み物用のストローは、女性の参加者ではそこまで結果がそろいませんでした。飲み物用より細いものを選んでください。売り場では、カクテル用やお子さま用として細いものが売られています。ただし、測ったのは健康な成人20名(男女各10名)です。
  • 材質は気にしなくてよい:プラスチックでもガラスでも違いはほとんどないと説明されています。どちらも、声の通り道の壁よりずっと固く、声のエネルギーをあまり吸わないためです(Titze, 2018)。
  • 抵抗を変えたいとき:変え方は、つまみ方か本数の2つです。プラスチックのストローは、つまむことで抵抗を調整できます(Titze, 2018)。抵抗を上げていく方法として、細いストローを3本並べてくわえるところから始め、徐々に1本まで減らしていくやり方を使う指導者もいると紹介されています(Titze, 2018)。

うまくいかないとき

ふさがれて詰まったような感じが強く、続けにくいときは、抵抗を下げます。細いほど抵抗は大きくなるため、太いストローに替えてください(Titze, 2018)。ただし、飲み物用の太さまで替えると、今度は抵抗が足りません(Maxfield ほか, 2015)。プラスチックのストローをつまんでいる場合は、つまむのをやめると抵抗が下がります。

反対に、ふさがれている感じがほとんど無いときは、細いストローに替えます。

苦しくなるときは、無理をせずいったん止めてください。

効果を測って確かめる

練習の前後で HASSEI METER を使い、抜け(SPR)芯(PEAK)の数値の変化を記録します。測定のルールは3つです。単発の数値で判断しない、毎回同じように声を出して推移を見る、録音の場所とマイクをそろえる。この3つを守って比較してください。

SPR

低い方の帯域と高い方の帯域の落差を表す数字です。HASSEI METER では「抜け」として扱います。

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PEAK

声の高い方の成分にできる山の鋭さを表す、HASSEI METER独自の指標です。「芯」として扱います。

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references / 出典

  1. Cielo, C. A., Lima, J. P. de M., Christmann, M. K., & Brum, R. (2013). Semioccluded vocal tract exercises: literature review. Revista CEFAC, 15(6), 1679-1689.
  2. Titze, I. R. (2018). Major benefits of semi-occluded vocal tract exercises. Journal of Singing, 74(3), 311-312.
  3. Guzman, M., Laukkanen, A.-M., Krupa, P., Horáček, J., Švec, J. G., & Geneid, A. (2013). Vocal tract and glottal function during and after vocal exercising with resonance tube and straw. Journal of Voice, 27(4), 523.e19-523.e34.
  4. Maxfield, L., Titze, I., Hunter, E., & Kapsner-Smith, M. (2015). Intraoral pressures produced by thirteen semi-occluded vocal tract gestures. Logopedics Phoniatrics Vocology, 40(2), 86-92.