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エッジボイス
プツプツとした音を手がかりに、声帯が閉じる瞬間を耳で確かめられるようにする練習です。音が鳴る仕組みまで解説します。
最終更新
声を思いきり脱力させて低くしていき、プツプツとした音に変えることで、声帯を閉じる感覚をつかむ練習です。
この練習のねらい
声帯が「閉じる」瞬間を、音として耳で確認できる状態をつくることが、エッジボイスのねらいです。
エッジボイスのプツプツとした音は、一粒一粒が、声帯が開いて閉じる動きに対応した音です(Roubeau ほか, 2009)。つまり、この音が鳴っているあいだは、声帯が閉じる動きが実際に起きていることを、一回一回、自分の耳で確かめられます。閉じているかどうかは目に見えず、感じ方にも個人差があるものです。だからこそ、音という動かない手がかりを基準にして、そのときののどの感覚を覚えていきます。
練習の前後で普段の声がどう変わるかは、「効果を測って確かめる」の手順で、芯(PEAK)・抜け(SPR)の推移として確認してください。
やり方
- 体の力を抜き、楽な高さで「あー」と声を伸ばします。
- 声をそのまま少しずつ低くしていってください。
- 出せる一番低い声まで下げたら、さらに低くしようとしてみます。声がプツプツとした音に変わったら、それがエッジボイスです。
ホラー映画『呪怨』のうめき声や、寝起きのかすれた低い声が、この音に近い例です。
プツプツとした音が鳴る仕組み
プツプツと粒のように聞こえるのは、声帯が開いて閉じる繰り返しが、普段の声よりずっとゆっくりだからです(Roubeau ほか, 2009)。
鍋に水を入れて火にかけると、中の蒸気がじわじわ溜まり、ふたが一瞬だけ浮いて蒸気が逃げ、またカタッと閉じます。これが繰り返されることで、カタカタという音が鳴り続く仕組みです。エッジボイスでは、これと同じように、ゆるんで厚みを持った声帯が動きます(Roubeau ほか, 2009)。このゆっくりとした開閉の繰り返しが生む音の連なりが、エッジボイスのプツプツとした音です。
このプツプツとした音は、声帯を壊してしまった音ではありません。人の声には、低い音向けのM1と高い音向けのM2という代表的な2つの出し方があります(詳しくはM1・M2)。エッジボイスは、そのどちらとも別に位置づけられる、独立した正常な出し方のひとつで、「M0」と呼ばれます(Roubeau ほか, 2009)。
うまくいかないとき
プツプツとした音に変わらないときは、肩や首、あごの力を抜き、もう一度声を少しずつ低くしていってください。
それでも閉じる感覚がつかみにくい場合は、別の入り口もあります。椅子に座り、両手で座面のへりを掴んで引き上げながら、短く「1、2、3…」と数字を声に出す方法です(Fujimaki ほか, 2017)。ここまでの脱力とは逆に、力を入れる動作を使います。声帯を閉じる方向に働きかける運動として研究されたものです。
ただしこの研究は、声帯が閉じにくくなった高齢の方を対象に改善効果を調べたもので、エッジボイスの練習に使う場合の効果まで確かめられているわけではありません。プツプツとした音は出ないため、感覚をつかむための補助として扱ってください。
声を低くしていく途中で苦しくなるときは、無理をせずいったん止めてください。
効果を測って確かめる
練習の前後で HASSEI METER を使い、芯(PEAK)・抜け(SPR)の数値の変化を記録します。測定のルールは3つです。単発の数値で判断しない、毎回同じように声を出して推移を見る、録音の場所とマイクをそろえる。この3つを守って比較してください。
references / 出典
- Roubeau, B., Henrich, N., & Castellengo, M. (2009). Laryngeal vibratory mechanisms: the notion of vocal register revisited. Journal of Voice, 23(4), 425-438.
- Fujimaki, Y., Tsunoda, K., Kobayashi, R., et al. (2017). Independent exercise for glottal incompetence to improve vocal problems and prevent aspiration pneumonia in the elderly: a randomized controlled trial. Clinical Rehabilitation, 31(8), 1049-1056.