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ミックスボイス
ミックスボイスと呼ばれる声を測った研究では、M1・M2とは別の出し方は見つかっていません。
最終更新
ミックスボイスとは、歌の指導の現場で「地声と裏声の中間のような、切り替えが目立たない声」を指して使われる呼び名です。フランス語では voix mixte(ヴォワ・ミクスト)と言います。
ただし、研究(Castellengo ほか, 2004)によると、英語圏には medium voice・middle・mixed voice など似た言葉がいくつもあり、必ずしも同じ技術を指しているとは限りません。日本語の「ミックスボイス」も英語の mixed voice が元になっていますが、使う人によって指す範囲が少しずつ違う可能性があります。
代表的な2つの出し方:M1とM2
人の声には、低い音向けのM1と高い音向けのM2という代表的な2つの出し方があります(詳しくはM1・M2)。のどの奥にある声帯という部分の震え方が変わることで、この違いが生まれます。
ミックスボイスは、M1かM2のどちらかの中で作られていると報告されている
西洋のオペラやコンサートで歌うプロ歌手5名を調べた研究で、ミックスボイスと呼ばれる声は、M1かM2のどちらかの出し方の中で作られていると報告されています(Castellengo ほか, 2004)。新しい別の出し方が生まれているわけではない、ということです。
この研究が使ったのは、のどの外から声帯の動きを測る機械です。参加した5名(バリトン・ソプラノ・カウンターテナー)には、男性・女性を問わず、M1の中でミックスボイスを出す人とM2の中で出す人の両方がいました。どちらの出し方でミックスボイスを作るかは、この実験の範囲では性別で決まっていませんでした。
ミックスボイスという声の狙いは、今使っている出し方のまま、もう一方の出し方の音色に近づけることです。声の強さを変えたり、高い方の成分にあるシンギング・フォルマントの響きを調整したりして、この近づけ方を実現しているとCastellengo ほか(2004)は説明しています。
ただし、歌手が「ミックスボイス」と呼ぶ声を測ると、地声とも裏声とも違う特徴が出ることは報告されています(Lee ほか, 2023。ポピュラー系を中心とする歌手12名)。
つまり「体の中で起きていること」と「歌い方として区別できること」は、別の話です。
なぜHASSEI METERはミックスボイスを判定しないのか
HASSEI METER は、「ミックスボイスができているか」を判定するのではなく、抜け(SPR)・芯(PEAK)・クリア(CPPS)という、音として測れる結果だけを見ます。
同じように「ミックスボイス」と呼ばれていても、M1の中で作られている場合とM2の中で作られている場合があります。どちらの出し方を使っているかを見分けるには専門的な機械での測定が必要で、HASSEI METER が扱う音の解析だけでは分かりません。
ミックスボイスがM1とM2の切り替わり方に注目した呼び名であるのに対し、ベルティングは音の大きさや明るさ(力強い高音)に注目した呼び名です。
次に読むもの
- M1・M2 — 地声と裏声が切り替わる場所は測り方で変わり、研究で調べた合唱団員の多くではそもそも特定できなかったことを知る
- ベルティング — 呼び方が分かれていても、体の使い方まで分かれているわけではないことを知る
- 3つの指標 — 声の出し方は見分けられなくても、音から何が分かるのかを知る
references / 出典
- Castellengo, M., Chuberre, B., & Henrich, N. (2004). Is voix mixte, the vocal technique used to smoothe the transition across the two main laryngeal mechanisms, an independent mechanism? Proceedings of the International Symposium on Musical Acoustics (ISMA2004), Nara, Japan.
- Lee, Y., Oya, M., Kaburagi, T., Hidaka, S., & Nakagawa, T. (2023). Differences among mixed, chest, and falsetto registers: A multiparametric study. Journal of Voice, 37(2), 298.e11-298.e29.