声の高さとは、その声がドレミのどの音にあたるかということで、のどの奥にある左右2枚の声帯が1秒間に震える回数で決まります。この回数はヘルツ(Hz)という単位で表し、研究の世界での呼び名は基本周波数です。声の高さに何が関わっているかは研究で分かってきていますが、一人ひとりが出せるいちばん高い音がどこで止まるのかは、この記事で紹介する研究では分かりません。

声の高さの平均は、声帯の長さでおおむね決まると報告されている

人や動物を見比べると、その生き物の声が平均してどのくらいの高さかは、声帯の長さでおおむね決まると報告されています(Titze ほか, 2016)。

声帯を弦に見立てて、その長さと張り具合から出せる高さを計算した研究です。それぞれの生き物の声帯の大きさから、出せる高さの範囲を予測しています。

弦の音の高さを決めるのは、長さと張力です。長い弦ほど低く、強く張るほど高くなります。声帯の場合、長さを変えられるのは、その両端がついている軟骨を動かしたときだけだと、この研究は述べています。

ただしこれは計算による予測であって、人の個人差を測ったものではありません。

出せる高さの範囲の広さは、長さだけでは決まらないと報告されている

出せる高さの範囲の広さを左右するのは、声帯を伸ばす筋肉の働きと、伸ばされた声帯の張りがどれだけ急に強まるかだとされています(Titze ほか, 2016)。

伸ばした分に対して張りが急に強まるほど、出せる高さの範囲が広くなるという計算です。この研究は、軟骨どうしがよく動いて声帯を大きく伸ばせる場合と、伸びは小さくても張りが急に強まる場合の、どちらでも同じ音域になりうることも示しています。

音域の広さが同じでも、その中身は1通りには決まらないことになります。これも計算モデルによる予測であって、人を測って確かめたものではありません。

のどの軟骨の大きさからは、声の高さを説明しきれないと研究は述べている

成人210名のCT画像を調べた研究は、のどの軟骨の大きさから声の高さを説明するのは単純化しすぎだと述べています(Riede ほか, 2023)。

首のCT画像から甲状軟骨(のどぼとけを形づくっている軟骨)の形を立体的に再現し、その個人差がどこから来ているかを調べた研究です。性別・年齢・体格で分けた42通りの区分に5名ずつ、あわせて210名を集めています。軟骨のかたちの違いのうち、性別・年齢・体格で説明できたのは全体の5分の1ほどで、残りのおよそ80%は遺伝や環境など他の要因によるものだと論文は述べています。

ただし、この「単純化しすぎ」は測定から直接出た結果ではなく、著者らが結果をもとに述べている解釈です。この研究は声を測っておらず、対象も歌手ではなく、別の目的で首のCTを撮った成人です。

同じ性別の中で見ると、軟骨が大きい人ほど特定のかたちに寄る、という関係は見られませんでした。かたちの特徴と大きさは、別々に散らばっていました。

論文は、軟骨が大きいか小さいかで声の高さを見積もると外れることがあるとして、声帯そのものの性質を考えに入れるべきだとしています。

いちばん高い音域でも、声帯は震えていると報告されている

プロの女性オペラ歌手9名が、クラシックの歌唱でもっとも高い部類の音域を歌ったとき、9名全員で、声帯が震えながら触れ合っていました(Echternach ほか, 2024)。

声帯の動きを非常に速い速度で撮影できる内視鏡で記録した研究です。歌わせたのは、C6からG6まで上がっていく音階です。この高さの声は「ホイッスルレジスター(笛の声)」、日本では「ホイッスルボイス」と呼ばれることがあります。しかしこの研究は、笛のように空気の流れだけで音ができているのではなく、ふだんの声と同じように声帯が震えて音ができていると示しています。

論文がこの呼び名で指しているのは、M1・M2でいうM3(人の声でいちばん高い音域の出し方)です。ただし、どの高さから始まるのかについては、定まった定義がありません。論文は、D#5からD6のあたりで切り替わるとした研究、C6からとする書き手、F6以上でなければそう呼ばないとする書き手を挙げています。呼び方が人によって揺れることは、M1・M2でも同じです。

ここから分かるのは、この高さの音がどうやって出ているかであって、誰がその高さを出せるかではありません。

一人ひとりがどこまで高い音を出せるかは、ここで紹介した研究では分からない

その人が出せるいちばん高い音が体のつくりでどこまで決まるのかを、人を測って調べた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。

この問いに答えるには、同じ人について体のつくりと出せるいちばん高い音の両方を測る必要がありますが、3つの研究はどれもその形をとっていません。

したがって、ここで紹介した研究から、ある人の声がどこまで高く出せるかを体のつくりで見積もることはできません。

HASSEI METER が測るのも、体のつくりではなく、出てきた音の結果です。抜け(SPR)芯(PEAK)クリア(CPPS)は、いずれも録った声の成分から計算する指標で、声帯や軟骨がどうなっているかは分かりません。

次に読むもの

  • M1・M2 — 同じ高さの音でも、声帯の震え方は1通りではないことを知る
  • のどの筋肉 — 声の高さを決めているのがどの筋肉かは、研究の間で一致していないと知る
  • 声道の大きさ — 声の高さを作るのは声帯で、声の響きを変えるのはのどから口までの空間だと知る
  • 3つの指標 — 抜け・芯・クリアが、それぞれ声のどこを見ている数字なのかを知る

M1・M2

おおまかには地声がM1、裏声がM2。声帯の震え方の違いによる、2つの声の出し方の呼び名です。

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SPR

低い方の帯域と高い方の帯域の落差を表す数字です。HASSEI METER では「抜け」として扱います。

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PEAK

声の高い方の成分にできる山の鋭さを表す、HASSEI METER独自の指標です。「芯」として扱います。

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CPPS

息漏れの少なさと結びつく、声の規則正しさを表す数字です。HASSEI METER では「クリア」として扱います。

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のどの筋肉

声を出すときに働く、声帯を動かす筋肉と、のどの奥にある喉頭を動かす筋肉のことです。

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声道の大きさ

のどの奥にある喉頭の高さと、のどの広さで決まる、声が響く空間の大きさのことです。

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references / 出典

  1. Titze, I., Riede, T., & Mau, T. (2016). Predicting achievable fundamental frequency ranges in vocalization across species. PLoS Computational Biology, 12(6), e1004907.
  2. Riede, T., Stein, A., Baab, K. L., & Hoxworth, J. M. (2023). Post-pubertal developmental trajectories of laryngeal shape and size in humans. Scientific Reports, 13, 7673.
  3. Echternach, M., Burk, F., Köberlein, M., Döllinger, M., Burdumy, M., Richter, B., Titze, I. R., Elemans, C. P. H., & Herbst, C. T. (2024). Biomechanics of sound production in high-pitched classical singing. Scientific Reports, 14, 13132.